「話せる」のに「わからない」
英語(英検対策)・国語・社会・理科を教えている左雲(さくも)です。小学生低学年から高校生まで、年代を問わず幅広く担当しています。
わたしのブログでは、日々の授業での経験をもとに、勉強の取り組み方や成功事例、時には生徒と話し合った時事問題などについて綴っています。
「うちの子、あんなに楽しそうに友達と話しているのに、どうして教科書の内容になると理解が止まってしまうのかしら」
「日常会話には困っていないはずなのに、物事の理由を説明させようとすると言葉が詰まってしまう……」
お子さんの学習を支える親御さんにとって、こうした「言葉は出ているのに、中身が伴っていない」という感覚は、言いようのない不安の種ではないでしょうか。
周りからは「言葉ができる」と思われている分、その内側にある「言葉の空洞」に気づいている親御さんの孤独は、より深いものになりがちです。
「話せる」ことと「理解して学ぶ」こと。この二つの間には、実はとても深い、そして大きな溝があります。
「生活の言葉」と「学習の言葉」のあいだ
わたしは多様なルーツやバックグラウンドを持つ多くのお子さんたちと向き合う中で、ある重要な事実に直面してきました。それは、言葉には二つの異なる側面があるということです。
一つは、挨拶や遊び、日常の要求を伝えるための「生活の言葉」としての言語。もう一つは、目に見えない概念を理解し、論理的に考え、自分の意見を組み立てるための「学習の言葉」としての言語です。
一見、言葉を流暢に操っているように見えても、それは「生活の言葉」という表面的なレイヤーに留まっていることがあります。
オンラインでの授業中、こちらの問いかけに明るく反射的な返事をしてくれる生徒が、いざ「なぜそう思ったのか、順序立てて説明してみて」と促すと、途端に言葉を失ってしまう——。そんな場面を何度も目にしてきました。
これは能力の問題ではなく、言葉がまだ「思考の道具」として機能していない状態なのです。言葉が単なる「音」や「合図」として処理されており、自分の内面にある「考え」と深く結びついていない。このズレこそが、「話せる」のに「わからない」という現象の正体です。
知識を「血肉」に変えるための対話術
では、どうすれば言葉をお子さん自身の学びの武器へと変えていけるのでしょうか。
大切なのは、親子の会話の中に「目に見えないもの」を言語化する機会を増やすことです。
「今日は何をしたの?」という事実確認の問いから一歩進んで、「その時、どんな気持ちになった?」「どうしてそうなったと思う?」といった、答えが一つではない問いを投げかけてみてください。
オンライン塾での指導で私が最も大切にしていたのは、子どもが適切な言葉を探している最中の沈黙を待つことです。大人が正解を先回りして教えるのではなく、拙くてもいいから自分の内側にあるモヤモヤを言葉にしようともがく。そのプロセスこそが、言葉の器を広げ、思考力を養います。
語彙を増やすことは、単に知っている言葉を増やすことではありません。その言葉を使って、自分の世界をどれだけ深く、細やかに切り取れるようになるか。その地道な積み重ねが、薄っぺらだった言葉の壁を、学びを支える強固な土台へと変えていくのです。
言葉の土壌を耕す日々
「話せる」という果実が実っていても、その根っこにある「概念の理解」という土壌がまだ十分に耕されていない時期はあります。例えば、小学校低学年ではまだ概念を理解し説明することが難しいですが、小学校中学年ぐらいになると認知したものを説明することができるほどに成長していることが望ましいです。
日々の何気ない対話を通じて、言葉と思考を繋ぐ作業を繰り返していけば、いつか必ずその言葉は学びを支える柱へと変わっていきます。
焦る必要はありません。お子さんが発する一つひとつの言葉に、ゆっくりと「意味」と「実体」を肉付けしていく。その歩みそのものが、本質的な知性を育む唯一の道なのです。
さいごに
「言葉が学習に結びつかない」という悩みは、特に複数の言語が飛び交う環境で子育てをされている海外在住の親御さんにとって、より切実な問題として立ちふさがっていることとお察しします。
現地の言葉と母国語。その狭間で、お子さんの言葉がどちらも宙に浮いているように感じ、不安に感じられることもあると思います。
お子さんの頭の中では今、二つの異なる世界を統合し、より豊かで複雑な「思考の器」を作られようとしています。そのプロセスには、どうしても時間が必要です。表面的な流暢さに一喜一憂せず、お子さんの心の動きにじっくりと耳を傾けてください。あなたが注ぐ温かな対話の時間は、必ずお子さんの「生きる力」としての言葉を育むための糧となります。
優心オンラインでは、海外在住者専門の個別指導塾として、海外在住経験の豊富な講師陣が、生徒一人ひとりの理解度や興味、学習環境に合わせてきめ細やかなサポートを行なっています。
ただ勉強ができるようになることを目指すのではなく、ひとりひとりのお子さんが楽しんで勉強に取り組み、生きる力を身につけることに重きを置いています。
海外にいながら、日本の学校の学習に合わせて進めることも可能です。
お子さんの学習について何かご不安な点があれば、ぜひ一度当塾にご相談ください。