机に向かってする勉強だけが英語の勉強ではない

英語(英検対策)・国語・社会・理科を教えている左雲(さくも)です。

小学生低学年から高校生まで年代問わず幅広く教えています。

わたしの担当ブログでは、これまでの授業の経験から勉強の取り組み方や成功事例だけでなく、授業内容とは外れてしまうかもしれませんが時事問題などの学生と話し合ったことについてブログに残していこうと思います。

日本の英語のテストで点数が取れない

「英語での日常会話には困らないのに、いざ日本の英語のテストになると点数が取れない」

「文法問題になると、感覚では答えが分かるけれど、なぜそうなるのかを論理的に説明できない」

海外で日々英語に触れ、努力されている生徒さんや、その成長を見守る保護者の方から、このようなお悩みを伺うことが少なくありません。インターナショナルスクールや外国で日本語が通じないために英語が使える環境にいるのに、将来の日本の受験を考えると不安になってしまう…。

しかし、どうかご安心ください。その悩みは、皆さんが付け焼き刃ではない「本物の英語力」を身体で習得しているからこそ生まれるものなのです。そして、それは日本の受験においても、間違いなく大きなアドバンテージになります。

今回のコラムでは、なぜ「会話力」と「テストの点数」にギャップが生まれるのかを解き明かしながら、海外在住という最大の強みを日本の受験に活かすための具体的な学習法について、詳しくお話ししていきます。

「生きた英語」と「受験英語」の決定的な違い

まずご理解いただきたいのは、皆さんが日々使っている「生きた英語」と、日本の入試で問われる「受験英語」とでは、その性質や目的が少し異なるという点です。

これは、スポーツに例えると非常に分かりやすいかもしれません。

皆さんが普段、学校や街中で使っている「生きた英語」は、実際にフィールドで仲間と試合をする「実践プレー」のようなものです。そこでの一番の目的は、パスを繋ぎ、チームとしてゴールを目指すこと、つまり相手とスムーズにコミュニケーションをとり、意思疎通を図ることです。

多少のフォームの崩れや、細かなルール違反があったとしても、試合の流れの中で「伝える・伝わる」という目的が達成できれば問題ありません。たくさんのプレーをこなす中で、身体が自然と動き方を覚えていく感覚に近いです。

一方、日本の「受験英語」は、そのプレーのルールをどれだけ正確に理解しているかを問う「ルールブックの読解テスト」や「戦術分析」に近い側面があります。

「なぜ今のプレーはファウルになったのか」「このフォーメーションを組む理論的なメリットは何か」といったことを、ルールブックに書かれている言葉で、論理的に説明できる力が求められます。

つまり、感覚的に「使える」だけでなく、文法や語法のルールに基づいて「なぜそうなるのか」を「説明できる」知識が必要になるのです。

海外での生活は、「実践プレー」の機会に無限に恵まれています。これは、日本で教科書を中心に学習する生徒さんには決して真似のできない、圧倒的なアドバンテージです。

ただ、日本の入試という「ルールテスト」に対応するためには、その素晴らしい実践経験を、知識として丁寧に整理してあげる作業が少しだけ必要になる、というわけです。

海外在住のアドバンテージを活かす!「経験」を「知識」に変える3ステップ

では、具体的にどのようなことを意識すれば良いのでしょうか。日本の受験生のように、毎日何時間も机に向かって分厚い文法書をひたすら暗記する必要はありません。大切なのは、皆さんの持つ膨大で豊かな「英語体験」と、受験で問われる「文法ルール」という知識を、一つひとつ結びつけていくことです。

ステップ1:普段の生活を「意識的なインプット」の場にする

まず、今いる環境を最大限に、そして意識的に活用することから始めましょう。学校の先生や友人との何気ない会話、夢中になって観る映画やドラマ、お気に入りの洋楽の歌詞、SNSの投稿、興味のある分野のニュース記事など、日常に溢れる英語のすべてが教材となります。

これからは、それらに触れる際にほんの少しだけ学習のアンテナを張ってみてください。

「友達が使っていたこの言い回し、自然でかっこいいな」

「この単語、前は違う意味で使われていたけど、こういう場面でも使えるんだ」

「ドラマのこのセリフ、なぜ過去形ではなく現在完了形を使っているんだろう?」

このように、心に留まった表現や疑問に思ったことを、スマートフォンのメモ機能やノートに書き留めておくだけで、それは単なる情報から、自分だけの貴重な学習素材へと変わります。この「生きた素材」のストックこそが、皆さんの英語学習の揺るぎない土台となります。

ステップ2:「なぜ?」をフックに、体験と知識を結びつける

次に、ステップ1で集めた「自分だけの素材」について、「なぜだろう?」と少しだけ深掘りしてみましょう。この知的好奇心こそが、皆さんの感覚的な英語力を、論理的な知識へと進化させるための最も重要なエンジンとなります。

例えば、誰かにアドバイスをするときに、友人が “If I were you, I would…” と言っていたとします。学校で「私」に対応するbe動詞は “was” だと習ったはずなのに、なぜここでは “were” が使われるのでしょうか?

その「なぜ?」をきっかけに、辞書や文法書、インターネットで調べてみてください。すると、そこには「仮定法過去」という文法ルールが存在することを発見するでしょう。「現在の事実とは異なる仮定」を話すときには、be動詞は主語に関わらず “were” を使う、というルールです。

この瞬間、「ああ、あの時友達が言っていた、現実とは違う『もし私があなただったら』という表現は、この『仮定法』というルールに基づいていたんだ!」と、皆さんのリアルな体験と、無機質に見えた文法ルールが、パズルのピースのようにカチッとはまるのです。この「なるほど!」という納得感を伴った知識は、単に暗記しただけのものとは比べ物にならないほど深く定着し、他の場面でも応用できる本物の力となります。

ステップ3:日本の入試問題に向けた勉強は「実力確認のツール」にする

日本の文法問題や長文読解問題に対して、苦手意識を持っている方もいるかもしれません。しかし、これからの皆さんにとって、それらは「新しい知識を詰め込むための苦行」ではありません。いわば、「自分の英語力がどれだけ確かなものかを確認するためのツール」だと捉え直してみてください。

問題を解いてみて、「うん、いつも使っている感覚でこの前置詞を選んだけれど、やっぱり合っていたな」と自分の感覚の正しさを確認し、自信を深める。長文を読んで、「普段流れてきたニュースで読んだ英文と同じように、入試の問題でも背景知識を活かしながらスムーズに内容を理解できる」と実感する。

もし間違えてしまったとしても、落ち込む必要は全くありません。それは、あなたの英語力が低いのではなく、「体験」と「知識」の整理がまだ少しだけ必要な部分が見つかった、という貴重なサインです。その部分の「なぜ?」だけを、もう一度ステップ2に戻って確認・修正すれば、皆さんの英語力はさらに穴のない、盤石なものへと進化していくのです。

まとめ

皆さんが海外生活という特別な環境で得た「生きた経験」こそが英語学習の根幹であり、それを受験というルールに合わせて整理・分析していくことが何より効果的です。

海外で生活をして使っていた英語、聞こえてきた英語、どんな経験も日本の受験において、他の受験生に差をつける最大のあなたの強みになるでしょう。そしてその力は、大学での研究や、将来国際的な舞台で活躍する際にも、皆さんを力強く支えてくれるはずです。

優心オンラインでは、生徒さん一人ひとりが持つ「生きた英語」の素晴らしい経験を最大限に尊重しながら、それが日本の受験で求められる「知識」としっかりと結びつくよう、専門の講師が丁寧にサポートしています。

学習の進め方で困ったときは、いつでもお気軽にご相談ください。

(左雲)