家庭で育む「思考と学力の根っこ」——多言語環境での学習

英語(英検対策)・国語・社会・理科を教えている左雲(さくも)です。小学生低学年から高校生まで、年代を問わず幅広く担当しています。

わたしのブログでは、日々の授業での経験をもとに、勉強の取り組み方や成功事例、時には生徒と話し合った時事問題などについて綴っています。

多言語環境での学習は、時に「あれもこれも」と詰め込みがちになります。しかし、オンライン塾で多くのお子様と接してきた経験から言えるのは、家庭で最も大切なのは「教え込むこと」ではなく「考える土台を整えること」だということです。

この記事では、今日から家庭で実践できるアプローチと多言語教育における重要な考え方をご紹介します。

言語における2つの側面

教育心理学者のジム・カミンズは言語能力に関して二つの側面を提唱しました。

「BICS(生活言語能力)」は、日常会話を中心とした能力で、日常では文脈の助けにより1〜2年で習得可能です。対して「CALP(学習言語能力)」は、教科書の理解や論理的思考に不可欠な「学びの道具」であり、習得には5〜7年以上を要します。

海外在住者専門の塾講師としてこれまで働く中で、おしゃべりな子でも学習に必要な国語能力がともなわず、お子さん本人がモヤモヤしながら学習に取り組んでいる様子を幾度となく目の当たりにしてきました。

その状態で学習を進めると、母語も第2言語もどちらも十分に習得できないということにもなりかねない、そうなってしまったという相談を受けることは、この業界にいるとよくあります。

言語に関わらず、国語能力が思考能力に影響してきます。どちらの言語も中途半端になってしまうと、思考力が鍛えることができずに高校受験や大学受験で大変苦労します。

いわゆるバイリンガルになるためには、学習や家庭内での言語の使い分けなど、ちょっとした積み重ねがとても重要です。

1. 「なぜ?」を深掘りする対話の習慣

ジム・カミンズが言うところの、日常会話(BICS)から学習言語(CALP)への橋渡しに欠かせないのが、親子の深い対話です。

単なる事実の確認(「今日は何をしたの?」)だけでなく、一歩踏み込んだ問いかけを意識してみてください。例えば、

「どうしてそう思ったの?」(理由の言語化)

「もし〇〇だったら、どうなるかな?」(仮説思考)

こうした問いに対し、お子様が自分の言葉で説明しようとするプロセスそのものが、論理的思考のトレーニングになります。

この場合、使う言語は、親子が最もリラックスして話せる「強い方の言語」で構いません。思考の深さは、言語の壁を超えて共有されるからです。

2. 読書を特別な学習にしない工夫

思考力を支える、語彙力や読解力の源泉となる読書。

多言語環境では「日本語の本は難しい」と敬遠されがちです。習慣化のコツは、読書を「勉強」という枠から外すことです。

例えば、読み聞かせを継続することで、耳から入る言葉により、読解のハードルを下げてくれます。自分で読むのが億劫と感じてしまうお子さんが多いので、親が読んであげる時間を持つ良いでしょう。

それだけでなく、興味に連動した読書をすると良いでしょう。わたしは最初はマンガでも良いので、学校で知った物語に関連するテーマのマンガを読むといいとおすすめしています。現地の学校で学んでいる歴史や科学のテーマに合わせ、関連する日本語の図鑑や漫画を用意することで、背景知識がある内容は、語彙が難しくても驚くほどスムーズに読み進められます。

この際、「1冊読み切る」ことよりも、「面白い情報に日本語で触れる」という成功体験を積み重ねることが大切です。

3. 国語学習だけでなく算数学習もいっしょに進める

わたしはよく、「算数も国語能力を鍛えることができるので並行して学習してください」と親御さんにお伝えしています。

なぜなら、教育業界でよく言われるのは「算数も言語を使った活動の一環」であるということです。

日本の教科書では、なぜその式になるのかを説明できるということが目標の一つになっています。

海外、特にインターナショナルスクールのカリキュラムを聞くと、計算に偏重していることもあります。そこで学ぶ彼らになぜこの式になったのかを聞いてもわからない、でも計算だけはできるという状態なのです。

日本の教育課程はゆっくりすぎると批判を受けることもありますが、日本では思考力を伸ばすことに重きを置いているので、仕方がない、むしろ、日本の教育の誇るべき部分なのです。

まとめ:家庭を「安心できる実験場」に

海外で学び、複数の文化を横断するお子様たちは、日々想像以上のプレッシャーの中で戦っています。多言語で混乱状態になることも少なくありません。

だからこそ、家庭は「正解を出す場所」ではなく、失敗を恐れずに自分の考えを試せる「安心できる実験場」として、学習能力だけでなく思考力を鍛えるために重要なのです。

そこで、私たちオンライン塾の役割は、家庭で育まれたその「思考の根っこ」を、学力という目に見える枝葉に伸ばしていくことです。

優心オンラインでは、海外在住者専門の個別指導塾として、海外在住経験の豊富な講師陣が、生徒一人ひとりの理解度や興味、学習環境に合わせてきめ細やかなサポートを行なっています。

ただ勉強ができるようになることを目指すのではなく、ひとりひとりのお子さんが楽しんで勉強に取り組み、生きる力を身につけることに重きを置いています。

海外にいながら、日本の学校の学習に合わせて進めることも可能です。

お子さんの学習について何かご不安な点があれば、ぜひ一度当塾にご相談ください。